中小企業と一緒に幸せな会社を創る商工中金さんの「幸せデザインサーベイ」を受けてみた

中小企業と一緒に幸せな会社を創る「幸せデザインサーベイ」というサービスを商工中金さんが考えています。
「幸せデザインサーベイ」では、企業の経営情報を見るだけでなく、同時に従業員のアンケートを分析して可視化することにより、従業員が生き生きと幸せに働くことができ、企業が持続的に成長できる幸せ経営の実現をサポートしていきます。

クウジットはソニー・コンピュータサイエンス研究所および株式会社電通国際情報サービス(ISID)と協業して因果情報分析 CALC(※) 技術をビジネス展開しています。
「幸せデザインサーベイ」では、事前に収集したデータをCALCで分析して、サービスの設計に活用して頂きました。
さらに今後の収集データについてもCALCを含めたデータ解析で協力させて頂く予定です。

今回、商工中金さんのご厚意により弊社でも「幸せデザインサーベイ」を受けてみました。
以降では「幸せデザインサーベイ」のスタンダード版の弊社の結果について説明させて頂きます。


【幸せペンタゴン】

「幸せペンダゴン」は、企業の幸せを5つの指標で表現したものです。
組織の指標は「コミュニティ・コミュニケーション」、「チーム・パフォーマンス」「マネジメント」の3つ、個人の指標は「カラダ」、「マインド(幸福度)」の2つです。
そして、これらの指標の重み付けで「幸せ指数」が計算されます。
弊社の幸せ指数は72点で、全体平均の56点よりも高い結果となりました。
幸せペンダゴンを見ると、3つの組織の指標は全体平均よりも高いものの、2つの個人の指標はほぼ全体平均と同じです。

それでは5つの指標それぞれについて見ていきましょう。


【個別フィードバック】

「コミュニティ・コミュニケーション」は職場内のコミュニケーションの評価で、詳細データでは「従業員同士の関係」や「上司との関係」や「地域との関係」について全体平均や業種平均と比較できます。

「貴社で働くみなさんは、上司や経営者などの管理者は、自ら社員に溶け込もうとしており、暖かい雰囲気を感じている傾向がうかがえます。留意点として、会社に本音で話せる友人がいないなど、従業員同士の良好な信頼関係がやや不足していると感じている傾向がうかがえます。」

弊社は上司との関係はかなり良いようです。
「従業員同士の良好な信頼関係がやや不足」と書かれてはいるものの、「会社に本音で話せる友人の有無」が最も低く、これも企業全体の平均ぐらいで悪いわけではありません。

「チーム・パフォーマンス」は働きやすい職場環境かどうかの評価で、「職場の居心地」や「職場の活気」について全体平均や業種平均と比較できます。

「貴社で働くみなさんは、周囲の変化に柔軟に対応できる社風だと感じている傾向がうかがえます。留意点として、コミュニケーションを促進する社員旅行などのイベントが少ないと感じている傾向がうかがえます。」

「職場の居心地」に関しては、人間関係を含めた雰囲気の数値が高いです。
ただし、用具や設備など物理的な労働環境に対しては平均レベルです。
「職場の活気」に関しては、「生き生きと情熱を持った社員が多い」と「旧来のやり方や慣習を変えない」の数値が非常に高く、新しいことに情熱的に取り組んでいく社風を表しています。
「社員旅行などのイベントが少ないと感じている」のコメント、「飲み会」と「社員旅行などのイベント」の数値は高くないものの企業全体の平均ぐらいです。
確かに会社の公式イベントは多くはないものの、プライベートで飲みに行くのは少なくはないと思います。

「マネジメント」は人材や労務マネジメント状況の評価で、「仕事のやりがい」や「仕事のやる気」や「個人の成長」などについて全体平均や業種平均と比較できます。

「貴社で働くみなさんは、上司の指示や情報伝達を待たず、自ら行動を起こす従業員が多い傾向がうかがえます。留意点として、福利厚生面の充足を求めている傾向がうかがえます。」

「上司の指示や情報伝達を待たず、自ら行動を起こす従業員が多い傾向」のコメント、これはまさにその通り、良い意味で勝手に突っ走るのが弊社の特長です。
「自ら行動を起こさず、何かにつけて上からの指示や情報伝達を待つ」の数値はかなり高いです。(逆転項目なので質問を満足しない方が数値が高くなります)
「仕事のやる気」の「モチベーションを高める雰囲気」や、組織の成長の「目標を達成しようとして行動」と「主体的な学び」や、「人事制度」の「長所や得意分野を考えて仕事が与えられている」の数値が高いです。
「福利厚生面の充足を求めている」のコメント、唯一の数値が低いのは「福利厚生制度や設備」です。

「カラダ」は個々の従業員が元気に働いているかどうかの評価です。

「貴社で働くみなさんは、睡眠が十分とれている傾向がうかがえます。睡眠は心身を回復させる働きがあり、毎日の健康を保つための大切な時間です。労働時間も適切に感じている傾向がうかがえます。留意点として、定期的な健康診断の受診意識が低い傾向がうかがえます。」

カラダは全体平均よりも低い唯一の指標です。
睡眠時間のみ全体平均よりも良いものの、特に悪いのは「健康診断の受診」と「ストレス」です。
このストレスが悪いのはコロナの渦中の4月にアンケートを取ったのが大きいと思います。

「マインド(幸福度)」は長期的なウェルビーイングの評価で、「人生満足尺度」や「幸せの4因子」や「日本版SHS(主観的幸福感)」について全体平均や業種平均と比較できます。

「幸せの4因子(①自己実現と成長、②つながりと感謝、③前向きと楽観、④独立と自分らしさ)のうち、貴社で働くみなさんは、第1因子である「自己実現と成長(やってみよう因子) 」が高く、夢や目標を持って実現していくことに幸せを感じる人が多い傾向がうかがえます。」

マインドは全体平均を上回っているものの、他の組織の指標と比較して、それほど高くはないです。
こちらもコロナの影響が大きいと思います。


【KEY ISSUE】

「KEY ISSUE」では課題となる質問項目の回答がヒストグラムで表示されます。
主要な質問項目で企業全体の中で偏差値が最も低い5つの回答が示されています。
青色のマネジメントの項目が3つと多く、後は黄色のチームパフォーマンスとオレンジ色のコミュニティ・コミュニケーションです。
弊社のワースト1は人事制度・福利厚生の福利厚生の質問で、次に悪いのは職場の活気の社内イベントの質問です。
レポートには載せていませんが、実際の数値を見てみると、福利厚生がかなり悪いのを除けば、他は企業全体の平均ぐらいで特に悪いわけではないようです。


「NEXT ACTION」では、幸せ指数にとって重要な指標である人生満足尺度と心理的コミットメントを向上させるために、優先して対応すべき課題を示します。

【人生満足尺度のNEXT ACTION】

人生満足尺度(Satisfaction With Life Scale)は主観的幸福度の指標として世界的に最も用いられているエド・ディナーによる指標です。
人生満足尺度を向上させるための指標として「人材マネジメント」、「人事労務マネジメント」、「チームパフォーマンス」、「カラダ」、「コミュニティ・コミュニケーション」の5つがあります。
グラフの横軸は人生満足尺度と5つの指標との相関係数が、縦軸は各指標の弊社の値と全体平均が示されています。
従って、人生満足尺度を向上させるためには、グラフの右側にあって、全体平均よりも低い指標を改善すべきだと言えます。

弊社の場合はカラダを除くすべての指標が全体平均よりも高く、今のままでも悪くはないものの、カラダの指標を改善してバランスを良くしていくことが、従業員を幸せにするための施策として必要であることがわかります。
そして、右上のGREATにある人材マネジメントと人事労務マネジメントが弊社の強みであることがわかります。

【心理的コミットメントのNEXT ACTION】

心理的コミットメントは経営者のマネジメントを測る代表的な指標です。
心理的コミットメントを向上させるための指標として「仕事のやる気」、「職場の活気」、「個人の成長」、「地域との関係」、「従業員同士の関係」があります。
グラフの横軸は心理的コミットメントと5つの指標との相関係数が、縦軸は各指標の弊社の値と全体平均が示されています。
従って、心理的コミットメントを向上させるためには、グラフの右側にあって、全体平均よりも低い指標を改善すべきだと言えます。

弊社の場合はすべての指標が全体平均よりもかなり高く、今のままで悪くはないと思います。
そして、右上のGREATにある仕事のやる気と個人の成長が特に弊社の強みであることがわかります。


さて、弊社に関する幸せデザインサーベイのレポートは以上です。

実は幸せデザインサーベイの骨格を決めるにあたって、事前にCALCというAIデータ解析技術を利用しています。
CALCはソニーコンピュータサイエンス研究所によって開発された因果情報分析の技術です。
この技術を直感的に理解して頂くために「相関」と「因果」の違いを説明します。
例えば、夏にはアイスクリームが多く売れます。
同時に、夏には水難事故が多く発生します。
従って、アイスクリームの売上と水難事故の件数は相関します。
しかし、アイスクリームの売上と水難事故の件数には因果はないので、今年の水難事故を少なくするためにアイスクリームの販売を控えたとしても意味がありません。
CALCを用いて分析すると、下図のような変数間の因果グラフが自動的に作成されます。

【ある業種の幸せデザインサーベイの因果グラフ】

因果グラフでは、アイスクリームの売上と水難事故の件数のように因果でない関係は直接はつながりません。
このグラフは幸せデザインサーベイのある業種のデータを心理的コミットメントを目標変数として分析した因果グラフです。
つまり心理的コミットメントを高めるためにはどうすれば良いかが因果グラフとして推定されています。
例えば、赤い箱の心理的コミットメントを高めるためには、直接つながっているマネジメントの青い箱の組織の成長や仕事のやる気を高めれば良いことがわかります。
また、心理的コミットメントは直接つながっているオレンジの箱の経常利益率などの経営指標と関係があることがわかります。
さらに、心理的コミットメントから仕事のやる気を通してつながっているピンクの箱の幸せに関する指標が改善されることがわかります。
このようにCALCで分析することで、この業種の心理的コミットメントを高めるためには、どのような施策を行えば良いかの指針を得ることができます。

※ CALCはソニー株式会社の登録商標です。
※ CALCは株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所が開発した技術です。
※ 弊社では、2015年度より慶應SDMの前野隆司先生、保井俊之先生らと幸福に関連した共同研究活動を継続するとともに、幸福に関連する技術やサービスを提供しています。

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1983年キヤノン株式会社入社。エキスパートシステムなど人工知能の研究開発。1990年株式会社ソニー木原研究所入社。CG・VR・AR・感情認識の研究開発、およびメディアアートへの応用。2000年ソニー株式会社転籍。Feelwareプロジェクトなどで、感情認識やウェアラブル・バイオセンシングの研究開発。2010年クウジット株式会社入社。「つながり」に関するリサーチからセールスまでがミッション。人と人のつながりによる共感や幸福の評価、データとデータのつながりを解明するデータ解析などが仕事です。幸福学とデータ解析を結び付けた健康経営の実践支援サービスにも関わっています。