GoPro で 360°水中撮影してきたよ! in 沖縄

2014/10/21 追記:ご要望をいただいたので海中のスティッチング動画も載せました。

いきさつ

2014年の8月末日にこんなイベントがありました。

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kyokai/20140901_664518.html
人と街をスポーツで繋ぐ「スポーツ&テクノロジーラボ」が発足

実はこのラボにはクウジットもコンセプト創出やイベント運営などで関わっています。ラボのお披露目会にて AquaCAVE という没入型水槽を展示したのですが、そこで使う海のコンテンツをクウジットで用意することになりました。

最初はフィジーで水中カメラマンをやっている友人に頼みたいなと思っていたのですが機材の準備面と費用面などで断念しました。

困ったなと思案していたのですが、現在沖縄にいる前職の同期なら顔が広いのでなんとかなるかもしれない! と思いすぐに連絡しました。すると期待通り漁船(!?)を安価で出してくれる人を紹介してくれました。なんと世界のダイバーがうらやむ慶良間諸島まで行ってくれるとのこと。これはありがたい!行く行く!などと二つ返事しているうちに、なし崩し的に自分「だけ」で行くことに。水中撮影経験ゼロですけど。360度撮影も経験ゼロですけど。でも初めての沖縄に心踊るのでした。

下準備

360°のパノラマ水中撮影をするには機材が肝心。先立って GoPro 6台でパノラマ撮影をしてきた東大暦本研の新田さんに機材を借ります。GoPro 3 Black Edition というマニア向けの高性能機を6台とハウジング、取り付け用の GoPro Hero 360 を借りました。まずは基本的なセッテイング方法を教えてもらいます。

IMG_3009

すげー、かっけー、サイバー! なんでも撮れそうな気がする!

見惚れてつい注意事項を聞きそびれそうになりました。危ない危ない。

水中&360度撮影ならではの基本的な注意事項があります。

  • 湿気の多いところでハウジングにカメラを入れない(レンズが曇る)
  • アンチフォグブレードをハウジングに入れて湿度を下げる
  • 途中でハウジングを開けられないので、バッテリーは拡張バッテリーを付けて前もってフル充電しておく。
  • 撮影時には毎回最初に大きな音をいれる(あとで6台のカメラを同期するため)

スケジュール

今回の撮影は1泊2日(!?)の強行スケジュール。初めての沖縄なのに楽しめない (T_T) 。まあ仕事だからしょうがないんだけど、初めての沖縄なんだし少しくらい観光したいなぁ。

しかも台風の影響で急遽日程を変更したためお盆時期にずれ込んでしまいました。航空券、レンタカー、すべてが厳しい。そんな中で建てたプランは次の通りです。

  1. 朝一の飛行機で那覇に向かう
  2. レンタカー借りる
  3. 八重瀬町具志頭(ぐしちゃん)の港に向かう
  4. 漁船で慶良間へ行って撮影
  5. 終了後那覇のホテルへ
  6. 次の日は予備日、夜の飛行機で羽田へ

予備日という名のフリーダム!な時間が楽しみです。このときは美ら海(ちゅらうみ)行っちゃうぞ〜などと脳天気状態でした。

いざ沖縄

朝一番のフライトで那覇へ。台風一過の真っ青な空と海が俺を待ってる!

ジャジャジャン!

IMG_3085_2

…。

…。…。

雨じゃん。

寝不足の目をスカッと覚ましてくれるはずが、余計に瞼が重くなってきた…。

眠い目をこすりながら、とぼとぼと予約しているレンタカー屋へ牛歩するのでした。

慶良間までの長〜い道のり

この日は台風後のお盆だったこともありめちゃめちゃ混んでいて、那覇には朝9時に着いたのにレンタカーで出発する頃にはすでに10時を回っていました。

那覇から島の反対側の具志頭(ぐしちゃん)に向かうのに40分程度なんですが、事前に確認した待ち合わせ場所は「具志頭の港川の港の先の方」というアバウトな内容…。本当に会えるのか不安です。先方とは面識がないので「赤い薔薇の花を咥えて立っていてください」…などというお願いもできません。まあ面識があってもお願いしませんが。

Google Maps を見てみると、どうやらここらへんのようなのですが…。

むぅ、これ以上拡大しても何も詳細は出てこないんですよ。

でも、部分的にストリートビューがあるじゃないですか。よっしゃ少しでも情報入れておこう!ジャジャン!

さっそくストリートビューをクリック!

ほあっ!?????  みっどないと?? こんなストリートビュー初めて見た。本当にこんな場所だったらどうしよう。

もう覚悟を決めてカーナビを頼りにとりあえず向かいます。港の先の方にいけばなんとかなるさ、なんくるないさ~♪とアドリブソングを口ずさむこと50分。港の先の方らしき場所に到着。誰もいない…。船を出してくれる平良(タイラ)さんに電話をします。すぐに電話が出て「すぐ近くに居ますよ〜」という心強いお言葉。どこだどこだと見渡したら「車の後ろですよ〜」と。え?いつの間に!忍者!?

これが今回お借りする平良さんの愛車ならぬ愛船「海仁丸」。平良さんはお仕事の傍ら趣味で漁船で漁をされているそうです。なんだか東京では味わえない生活スタイルですね。釣りが趣味なんですって人はけっこういらっしゃいますが、漁業が趣味なんですってなかなか言えないですよね。

IMG_3087

すでにこのとき時刻は11時を回っています。聞けば慶良間までたっぷり2時間半はかかるそう。慌てて出航の準備をします。忘れ物するのが怖かったのでスーツケースごと船に持ち込みました。港川から慶良間諸島までは次の図のような航路を通ります。ぐるっと糸満市を回りこんで西に向かいます。途中サメがたくさんいる島の横を通るそうです。

航路

海人(うみんちゅ)平良さんの操縦で海仁丸は大海原をひた走ります。

IMG_3142

沖はそこそこ波が強く船もけっこう揺れます。この動画は少し穏やかなタイミングだから撮れたもの。ガンガン揺れているときは両手でつかまっていないと立っていられません。行きだけで体力使い果たしそうです。

漁船にて慶良間へ!

ついに撮影

前置き長くてすいません。大海原をかけること2時間半、ついに最初のポイントに到達します。よっしゃ〜撮ったるど〜。いつの間にか雲も少なくなりテンションが上ります。どうですか、青い海に映えるマニアックな GoPro Hero 360 の勇姿。

IMG_3098

そして、今回事前に考えていた3つの方法がスタートしたのでした。陸の上では完璧だと思われたその作戦、すぐに浅知恵だったと思い知らされます。

方法その1 〜 長い棒作戦 〜

ship_f

長い棒の先に GoPro Hero 360 付けてゆっくり船で進めばいいんじゃない? というアイディア。

長い棒といえば物干し竿ですが、残念ながら物干し竿ではうまく GoPro を固定できません。GoPro Hero 360 には三脚穴が付いているので、そこに丈夫で長い一脚をつけることを思いつきました。丈夫なカーボン製で 1.8m まで伸びる SIRUI の一脚 P-324X を購入。

船の上ではこんな感じ。

一脚トローリング_4

これを持って、船の先端から海中へカメラを垂らします。ところがこれ、船の高さがあるので 1.8m 程度だと海面すれすれまでしかカメラが入りません。いきなり浅知恵っぷりが露呈してしまいました。

一脚トローリング_3

そこで、船尾の方がぎりぎり海面まで近づけるため急遽船尾に移動。進行方向に船が映ると困るのでこの状態でバックしてもらいます。

ship_b

ところが困ったことにスクリューが回転すると泡がすっごい出てカメラの前を横切っちゃいます。想定外です。

一脚トローリング_8

さらに想定外(想定していたけど単に甘く考えていた)なのが、先端の GoPro Hero 360 が受ける水圧。船がゆっくり進んでもすっごい圧を受けます。さらにここはプールではなくて海です。そう、波があるんです。ちょっとした波でも GoPro Hero 360 全体を押しのけようとします。この力が半端ないのです。なぜなら、、、

ship_b_teko

お分かりですか? 理科で習ったテコの原理を思い出してください。今回支点と作用点が同じ場所にあって力点が 1.8m も離れた場所にあります。力点にかかる力が僅かであっても、作用点にはすざまじい力がかかるのです。毎晩エア筋トレで鍛えあげた鋼のエア筋肉を持ってしても1分も支えていられませんでした。

方法その2 〜 スノーケリング作戦 〜

swim

これは分かりやすいですね。一脚の先にカメラをつけてスノーケリングしながら撮影します。先ほどのテコの原理を学習しているので一脚は畳んで短くします。

マスクをつけていざ! 単独で海に入る場合には安全上の理由で救命胴衣の着用は必須だそうです。

シュノーケリング_4

ボートの縁から入水。カメラをつけた一脚を平良さんから受け取ります。

シュノーケリング_1

ドボン! ぬは、綺麗!

シュノーケリング_2

トータルで20分近くスノーケリングで撮影しました。思ったより魚が少なかったのが残念…。

それでも、こんな映像が撮れました。

スノーケリングで撮影

方法その3 〜 トローリング作戦 〜

trolling

広い範囲を効率よく撮影するために考案したのが、ロープの先にブイを括りつけてさらにその先に GoPro Hero 360 をぶら下げるというトローリング作戦です。ブイまでの距離は15m ほど。登山用のザイルを GoPro Hero 360 の中央部に通して引っ張りました。ブイと GoPro の間も同じザイルで 1m ほどの長さでぶら下げます。この辺りは浅いのであまり長いと海底の珊瑚に引っ掛けてしまい珊瑚も GoPro も破壊してしまう恐れがあるからです。

らくらくトローリング

IMG_3100

ブイの先には GoPro がくくりつけてあります。

トローリング_1

勘の良い方はお気づきかと思いますが、この方法で撮影すると海中でカメラがくるくる回転してしまいます。でもそれを承知で撮影しています。スタビライズという技術を使って撮影後に回転を画像処理で止めることができるのです。でもちょっとうまくいくかどうかは半信半疑です。スタビライズを行うには画像の中にたくさんの特徴点が必要です。この特徴点の動きを見てカメラの回転方向を認識して補正をかけるのですが、海中なので特徴点がほとんど取れないのではないかと。

今回はどの方法も初めてだったので、いろいろな方法で試してみたという感じです。

トローリングも20分ほどやったところで時間はもう 16時を回ってしまいました。そろそろ帰らないと港につくのは夜になってしまいます。

活躍した GoPro を持って平良さんと記念撮影

IMG_3117

平良さんから All Free を頂いて船上で疲れを癒やします。

IMG_3121

本土に戻ってくる頃にはもう日が沈む直前でした。

IMG_3152

この後、港で機材を洗ってレンタカーに乗り込んだのは19時半。ホテルの部屋に入ってシャワーを浴びて一息ついたのが21時過ぎでした。今から前職同期で現在琉球光和社長の秦君と久しぶりの会食です。随分お待たせしてしまいましたが22時半には乾杯できました。一日の疲れが吹っ飛びます。

おまけ 〜 手こぎボート浅瀬作戦 〜

翌日は予備日という名のフリーダム観光日だったはず、、、ですが、今日も撮影です。実は昨晩ホテルに戻ってから撮影した映像を見て、もう少し追加で撮影したほうが安全だと思ったのです。夜遅くに平良さんに電話して無理を言ってもう一日お付き合いをお願いしました。本当に行き当たりばったりですいません。大変お世話になりました。

ただ、追加の撮影とは言っても飛行機の時間があるので慶良間を往復している余裕はありません。そこで港川漁港の外のリーフに手こぎボートで向かうことにしました。

完全手漕ぎだとつらいのでエンジンを取り付けてくれる平良さん。結局エンジン調子悪くて途中から手漕ぎになりました(笑)

IMG_3161

ボートで外海に向かいます。操舵は平良さんがやってくれました。本当にたくさん協力いただきまして感謝感謝です。

IMG_3163

ドボン!おお、慶良間まで行かなくても魚いるじゃん!

翌日

でも、なんだか珊瑚が白化現象で死んでいる感じがして心配です。温暖化と関係あるのだろうか?

白化?

そうこうしているうちに引き潮でボートが座礁気味に。この日は大潮だったようで出発時よりも1mも水位が下がってしまいました。ボートの浸水、天候もイマイチということもあって引き上げることにしました。

座礁

まとめ

総評としては、たくさん反省点がありましたが次回へのノウハウがたまった撮影でした。

撮影した  GoPro 6台の映像は Kolor 社の Autopano Video Pro でスティッチング作業を行って一つの映像に合成します。

Autopano_Video_Pro_64bits_1_6_3_-_Trial_Version_-_okinawa_kava_

投影する装置も360度の全方位ディスプレイが必要です。

浅い海の全天球画像では画像の重なる部分が少なく、また似たような景色になるためにスティッチングが難しいようで自動ではよい感じになりませんでした。無理やり平面にマッピングした映像を載せようかと思ったのですが、わかりにくくて逆にマイナスのイメージになってしまうので載せるのをやめました。やはり全方位ディスプレイで見てこそのコンテンツですね。

2014/10/21 追記:載せて欲しいという要望をいくつかいただいたので、無理やり長方形にマッピングしたものを載せました。スティッチングがうまくいっていないのが分かっちゃいますね。これも撮影時の反省点です。

沖縄全天球の無理やりスティッチング

最後に、今回の撮影を通して得たノウハウまとめなど。

  • 事前の計画について
    • 台風の後は水が濁るので時期を考えるべし
    • 大潮は潮の満ち干が大きいので干満時間を調べるべき
    • 到着日にいきなり撮影はやめたほうがよい。時間の余裕をもつべし。前日入りして、現地のスタッフと撮影計画のブリーフィングをすべし。
    • 独りより二人以上で行くのがよい。
      • 撮影の様子を撮影できない
      • トラブった時にもう一人動けると役立つことが多い。精神的にも楽。
  • 機材の準備について
    • レンズ曇り防止のためアンチフォグブレードは新品を余分に用意すべし
    • 機材のセッティングは湿度の低い場所で行うべし。ホテルやエアコンの効いた車内で。
      • なのでタクシーはダメ。必ずレンタカーで。
    • 船の上で準備できると思わないほうがよい
    • 船の上で映像の確認作業もできないと思ったほうがよい。揺れの問題もあるけれど、ハウジングを開けるのは湿度の高い空気が入るのでまずい。
    • 携帯の電波はかなり沖でも入った (ちなみに au)
  • 撮影に関する注意
    • 水深は 3m〜5m くらいあったほうがよい。海底が近いとうまくスティッチングできない
      • そういう意味ではダイビング撮影がよい。ただし最低二人ペアが必要なので手軽ではないが。
    • 海は特徴点が取りにくいためスティッチングやスタビライズといった画像処理に過度の期待をするなかれ。
    • 潮の流れの速いところは危険。引き潮の浅瀬でも流れが速いと身動き取れなくなる!しかも突然やってくる。今回速い潮に流されて岩に激突して怖かったです。
    • サンゴや岩は硬いです。グローブとシューズがないと怪我します。
    • 日差しをなめてはいけません。日焼け止め、Tシャツを常に着るなど対策必要です。
    • 同様に飲み物も大量に持って行きましょう。脱水症状になります。ただしアルコールは NG ですよ!海水をごくごく飲んだら死にます。

長くなってしまいました。最後まで読んでいただきありがとうございました!

謝辞

今回平良さんを紹介してくれた琉球光和の秦社長に感謝!

IMG_3159

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ヒゲ社長の甘い誘いにノッて 2014年4月に Koozyt に転職してきました。前の会社では主に音楽系や人間の感性の研究開発をやっていました。 Koozyt でもその経験を活かしたいと思っていますが、なぜか海に潜ったり寸劇やったりの日々です。