制作秘話 ~ 資生堂LINK OF LIFE展『カレーなるエイジング』編

【2016.10.31 資生堂銀座にて reported by atsuko】

制作秘話 ~『カレーなるエイジング』編

みごとな人と人との「LINK」を織りなす資生堂「LINK OF LIFE展」でした!大好評となった作品のひとつ「カレーなるエイジング」。今回、その制作に参加していたクウジットのエンジニアのお二人に、作品制作の裏話しをインタビューして参りましたので、そのレポートです。

◆インタビュー
話し手:小森顕博さん、石井徹さん
聞き手:atsuko

◆内容
資生堂展示「LINK OF LIFE エイジングは未来だ 展」への出展作品
「カレーなるエイジング」の制作裏話し。

◆制作ストーリー登場人物
石川智子(資生堂ビューティークリエイション部)
小森顕博(クウジット 空実研究員)
石井徹(クウジット 空実現場仕事人)
岩波宏(クウジット 空実シニアエンジニア)
大和田茂(萌家電-ソニーコンピュータサイエンス研究所)
吉岡章夫(アートディレクション-ジェットマン)
高島秀夫(カレー大好きDJ)
堀江宏昌(3DCGアーティスト)
※以上敬称略

◆目次
1.『 カレーになりたかった資生堂の石川智子さん 』
2.『 カレー星人はカレー肌! 』
3.『 カレーの ‟お印” はプロジェクションマッピング! 』
4.『「おたま」から鍋に落ちていく~ 』
5.『 そうだ「おたま」だ! 』
6.『 キモは自社製のIoTボード ‟Q.board” 』
7.『金魚をかいはじめた小森さん』
8.『 伝統の赤い ‟バタン” 』
9.『 お野菜がくだける姿と音 』
10. 『 新曲投入 』

制作秘話インタビュー

1. 『 カレーになりたかった資生堂の石川智子さん 』

展示にむけて、サクセスフルエイジングをテーマにあらゆる表現の可能性をイメージした石川さん。笑顔研究・分析化学を手がけていらっしゃることから、笑顔になるものやエイジングという要素を言葉に分解し、表現の可能性を探ったそうです。

そこからでてきた「カレーになりたい」という結論。クウジットの制作スタートは「石川さんがカレーになりたいらしいです!!」というお話しをいただくところから始まりました。

2. 『 カレー星人はカレー肌! 』

会場の黒い箱のなかでカレーをかきまぜていたカレー星人のあのお顔。あれは、その石川さんの力作です。カレー星人と対面したわたしも気づけなかったのですが、あのお肌の色はなんと「カレー粉」でお化粧されていたそうです!カレー星人ですものね。当然か?

カレーメイクのカレー星人

カレーメイクのカレー星人

エイジングはプロジェクションマッピング!

エイジングはプロジェクションマッピング!

3. 『 カレーの ‟お印” はプロジェクションマッピング! 』

カレー星人を見つめていると、時間の経過とともに、おでこや目尻に皺が少しづつ刻まれていくことに気がついたでしょうか。目の光やその皺は、クウジット 空実現場仕事人の石井徹さん作。カレー星人のお顔への投射距離や光の角度を計算し、いわゆる投射設計をおこなって、あの自然なシワをプロジェクションマッピングで仕込んでいたそうなのです。

顔にシワを描いてしまわないところがすごいです。描きたくなってもおかしくない紙粘土製なのに。でも、そうです。エイジングです。刻々と時がかさなる姿こそが大切だったのです!

体感はガッチリにぎられた「おたま」から

体感はガッチリにぎられた「おたま」から

4. 『「おたま」から鍋に落ちていく~ 』

VRコンテンツの製作は全体プロデュースを担当したクウジット 空実研究員の小森顕博さん。体験者がいつのまにかお鍋のなかの「カレー」にじぶんが溶けていく~と感じるあの体験で、カレーの中にひきこまれる感覚の「入口」となったのは「おたま」をにぎる手元感覚からでした。

そうでした。VR体験でえられる没入感は視覚からではなく脳で感じる体感です。「おたま」をぐるぐる回しつつ、お鍋をのぞきこんだり、次の瞬間なぜかお鍋のふちを見上げてみたり。そんな動作をしているうちに、いつしか「おたま」を握る手元からカレーの中にとけこんで。

そして、「わたし、カレーになりました!」

BE CURRY!!

BE CURRY!!

5. 『 そうだ「おたま」だ! 』

その小森さんは、8月の「Maker Faire Tokyo 2016」で、たまたま後ろのブースにいた旧知の仲の大和田茂さんの作品「おうちハック」の「泡だて器」をみています。ジャイロでかきまぜ動作を検出し、大和田さんのつくったアルゴリズムでその動作を認識する。あのアルゴリズムを使えたらカレーのおたま感もイケルなあ、と閃いてしまったのでした。

すべての道はあの日から「カレーなるエイジング」へとつながっていました!

6. 『 キモは自社製のIoTボード ‟Q.board” 』

体感没入感の肝となったのはクウジット自社製ハードの ”Q.board”。スマホに入っているような9軸センサー入りのこの商品が「おたま」にくっついています。この “Q.board” が体験者の動きに反応し、ユーザーの操作を映像に反映させることで「あ、わたしカレーを作ってる!」という感覚を演出できるのだそうです。

そういえば「勢いよくかきまぜて!」といわれました。具材がくだけて混ざるこの体感は、物理計算で行われているそうで「おたま」を勢いよく回せば具材の衝突スピードが速くなり、そのぶん具も大きくはじけるようになっているんだとか。映像があまりに自然で、実際の動作との差異や違和感を感じないのがこの体験の凄いところなのですね。

「こう動いたらこうなるよ」という知っている現実世界の体感を、未知の空間世界(お鍋のなか!)へ反映させて未知の体験をしてもらう、そういう美しい「LINK」ができていました。

7. 『金魚をかいはじめた小森さん』

ところで、このごろ金魚を飼いはじめた小森さん。金魚鉢の空気ポンプをみていてもう一つ閃いてしまいました。「この空気ポンプをつかえば匂いもイケルなあ」。ある日、オフィスで静かに作業をしていた小森さんがおもむろに立ち上がり「あのカレー粉ってまだありますか?」とパートナーの石井さんに問いかけるのをわたしも見てました。カレー粉・・・?笑

閃いて、そして、、もう展示会の前日でしたが!!そこから香りをだす制御基盤の製作をはじめたのはクウジット 空実シニアエンジニアの岩波宏さんでした。金魚の水槽用エアポンプから空気をだし、レトルトカレーの袋の空気を経由し、オキュラスの鼻もとへ。

「ほんとうにカレーの香りがする気がする!」というカレー体験者さんに「あ、ほんとうのカレーのにおいなんです~」と答える小森さんは心の中でガッツポーズをしていたと思います。

伝統の「バタン」のある風景

伝統の「バタン」のある風景

8. 『 伝統の赤い ‟バタン” 』

クウジットの会話でよく聞く「バタン」という響き。ずっとなんのことだかわかりませんでしたが謎がやっととけました。映像をスタートさせるあの…Button! Button!! Button!!!

クウジット伝統のイッピンなのでどんな創作にも外すわけにはいかないトレードマークのスタートボタン、いえ、バタン。これも岩波宏さんの作品ということです。

9. 『 お野菜がくだける姿と音 』

没入感に欠かせないのが体感と一致する「視覚」と「音」。まず、煮込まれるにつれ粉々に煮くずれていく様子を表現したい、ということで、特別な形状の「各種具材デザイン」が必要でした。小森さんがすぐに思いうかべたのは3DCGアーティスト堀江宏昌さん。今回の具材はその堀江さんの作品です。

そして、具材が炒められ~水が沸騰していく「音」制作は、全体のアートディレクションもしてくださった吉岡章夫さんのお仕事です。目を閉じるとまさにお鍋の中にいる!と感じる音の世界をつくっていただきました。

ある日、わたしも体験ブースの横に立ち「どうですか?ご自身もカレーになってきましたか~?」と体験者さんにききました。みなさん、なんともれなく「はい!なってきました~♡」というお答えでした!!

10. 『 新曲投入 』

最後にもう一つ大きな贅沢がありました。体感映像も映像作品。映画のようにオープニング曲とエンディングの曲がほしいのです。小森さんは、早速、”カレー大好きDJ” の高島秀夫さんに作曲をお願いしました!

こんなふうにして、幸せに映像に没入し、すっかりカレーになって帰ってくる、という1分間の体験が映画のようにまとまった世界に仕上がったのでした。

制作プロデュースをした空実研究員の小森顕博さん

制作プロデュースをした空実研究員の小森顕博さん

制作ディレクションをした空実現場仕事人の石井徹さん

制作ディレクションをした空実現場仕事人の石井徹さん

制作ウラ話し、いかがでしたか。
ほんの1分間の体験ですが、1分というのはハッ!と寝落ちて蘇るような。
ワープして帰って来たような。感じるのに足る長さのような気がします。
「もうちょっと、もう一回、ほんの少し物足りないくらいがよい匙加減」by 石井徹。

そうそう映像の最後にふりむいて空を見上げてみましたか?
そこには宇宙空間が広がっていましたよ~!感動です!

小森さん、石井さん、お時間ありがとうございました!
貴重な制作秘話を聞かせていただきました。
次回作も楽しみです!

reported by atsuko.

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